KU-MA 認定NPO法人子ども・宇宙・未来の会

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教材開発物語 熱気球



 教材としての熱気球は、2002年、NASDA広報時代のコズミック(アドバンストコース)で打ち上げられたのが最初で、カラフルな気球がみんなの目を奪った。

 この気球は、飯牟禮俊紀がボーイングの教師のためのスペースキャンプに参加し、そこでの教材を持ち込んでつくった。浮上するに適した紙を選んだり、こどもが製作し易いように型紙をつくったり、熱風を気体に送るランチャーの図面を引いたりして日本にある素材や方法を考えたのも飯牟禮であった。(注1)平成15年2月 宇宙開発事業団総務部広報室「未来のとびら 指導ガイド」より


初代の熱気球
 この気球は製作に時間がかかるため、宿泊型のコズミックやYACの分団活動のように時間があるときでないと打ち上げができず、通常のコズミックで実施されることは少なかった。

 一方、国分寺市科学センターでは、同じ頃、熱気球とは言い難いが、大気の科学の内容の一つとして「暖かい空気は上昇する」ことについての学習をスタンドをガイドにアルコールランプを熱源としてポリ袋に暖かい空気を詰める実験を行っていた。飯牟禮が開発したガストーチを熱源とするランチャーの存在を知り、45リットルのポリ袋を六枚貼り合わせた熱気球を揚げることにした。この大きさになると自重で浮上しない場合が多く、失敗を繰り返していたが、当時科学教室に都の嘱託として勤務していた松澤俊志が試行錯誤し厚さ0.015㎜の市販の薄い素材のポリ袋に行き着いた。


アルコールランプを熱源にして


6枚組み熱気球
(国分寺「宇宙の学校」)
 この熱気球がコズミックに登場したのは2006年11月釧路のキッズコースであった。親が協働してセロハンテープで袋貼りをし(所要時間30分)、子どもが絵柄を考えて気球を飾る(所要時間40分)という行程で完成させて打ち上げるというプログラムであった。この時、親と親、親子、子ども同士の見事な共同作業が生まれ、上昇 していく熱気球に拍手や歓声がわき起こった。参加した全ての人を巻き込む現象を目の前にし、教材の力に改めて感動したことを覚えている。


4枚組み熱気球
 その後、ほとんど全てのコズミック、学校連携の教材として教員研修にも登場し、2007年「宇宙の学校」の教材として冊子に載り、2008年コズミックのパック教材になったこともあって活用頻度の高い必須の教材になっている。この年、国分寺市科学センターの望月善郎が同じ素材で70㍑用の袋を富山県の業者に発注し入手するルートをみつけた。これにより4枚貼り合わせて同じ規模の熱気球ができることから、現在はこの袋で実施している。所用時間が15分以上短縮可能になり、打ち上げた気球を回収してもう一回のアンコールに応えられるようになった。

 2015年にバーナーを使用できない会場で熱気球を実施するため、山下法昭が塗装工事に使用する養生シートを使い、家庭用のドライヤーで揚げることを考案した。結果は良好で、電気が利用できれば火気禁止の会場でも実施可能になり、現在「宇宙の学校」ではこの方式で熱気球を実施している。また、火気使用による怪我や事故の危険性が無くなった。