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9月15日「準天頂衛星「みちびき」の打上げ成功」

 全地球測位システム(GPS)の精度を補完する技術をめざす準天頂衛星 「みちびき」が、H−UAロケット18号機によって、さる9月11日午後8時 17分、種子島宇宙センターから打ち上げられた。「みちびき」は、発射の 約28分後に高度約270 kmで分離され、地球周回軌道に入った。

 H-2Aロケット18号機打上げhttp://www.ku-ma.or.jp/ym/ym100915-01.jpg

 「みちびき」は、縦横約3 m、高さ約6 mの箱形をしており、重さが約4 トンある。現在日本国内で使われているGPSは、アメリカの軍事航行衛星 を使わせてもらっているが、山間部やビルの谷間などでは精度が一挙に落 ちる。そこで日本のほぼ真上の空(準天頂)を通る軌道に独自の衛星を打 ち上げて、そうしたGPSの「穴」を埋めようというのが「みちびき」の狙 いである。

 これからしばらくはエンジンの噴射を繰り返しながら軌道を上げて、平 均高度3万6000 kmの目標軌道へ移行することになる。すべて順調ならば、 年末ごろからカーナビなどの実証試験を開始することになろう。地上設備、 打上げ費用などを含む総開発費は約735億円で、文部科学省、国土交通省、 総務省、経済産業省の連携で開発したものである。

「みちびき」軌道図http://www.ku-ma.or.jp/ym/ym100915-02.jpg

 GPSの誤差は現在10 m程度だが、将来的にはこれを1 m以下にしたいとし ている。それが達成されると、交通、観光、防災などさまざまな分野で活 用が期待されるが、大きな8の字を描きながら軌道を描いていくので、衛 星1機が日本上空にとどまれるのは1日8 時間くらいである。常時使える ようにするには最低3機(望むらくは4基以上)が必要だが、まだ2機目以 降を準備するとの見通しは聞いていない。

 やっと代表選を終えた民主党政権が、どのような動きを見せるかが注目 されるが、長期の戦略を立てて足元の動きを固めていくというよりは、ま ず足元をみながらだんだんと遠くを見るような性格の政策しか期待できな いだろうから、当面はこの1号機の実証データをシコシコと検討しながら、 プロジェクトチームやワーキンググループで検討していくという方向が打 ち出されるのであろう。

 測位という技術は、日常生活だけでなく国家の安全保障に強い関わりが あるため、いろいろな国で独自のインフラ構築の動きがある。運用中のも のでは、アメリカのGPS30機、ロシアのGLONASS21機が稼働しており、ヨー ロッパのGalileo、中国の北斗(COMPASS)、インドのIRNSSなども準備が 進められている。日本の「みちびき」の場合は、よしんば3機の体制が敷 かれたとしても、あくまでGPSの補完・補強に過ぎず、独立した測位シス テムには程遠い。さまざまな問題と並んで、日本の歴史に「自立」の大道 を打ち出す課題の一つであると思うが、みなさんはどう感じておられるだ ろうか。

 なお、「みちびき」からは、GPSの一環として働くためにGPSと互換的な 信号が送信されるけれども、現在みなさんがお持ちのGPS受信機ではそれ を利用することはできない。「みちびき」の信号を使うためにはファーム ウェアの書き換えを要することを付け加えておきたい。

 「みちびき」を3機ないし4機の体制にするためには「巨額の予算が必要 だから当面見送る」みたいな言動がしばしば見られるが、これは政治の常 道で、選挙のためなら数兆円の金が一挙に湧き出てくることは頻繁に見ら れる。要は国家としての戦略の問題である。その点、JAXAは本気で自前の 測位システムとして、静止衛星と準天頂衛星を組み合わせる方式を検討し ており、7機ないし8機で「自立」することを構想していると聞いている。 よく物事を知っている現場の意見を熱心に冷静に聴いての政治主導であり たいものである。

 先回の「あかつき」「イカロス」の打上げもそうだったが、今回の H‐UAロケット18号機も、乗せた遠地点が、計画値36,140 kmに対して 36,150 km、近地点が目標値通りの250 km、軌道傾斜角も計画した通りの 31.9度と、極めて高精度の衛星軌道投入能力を示した。もちろん油断は禁 物だが、技術移転は見事に成功したと見るべきであり、ご同慶の至りであ る。

 今後このロケットが世界市場に殴り込みをかけるために、コスト・信頼 性・サービスの三要素が勝負となるが、これまで日本は漁業問題という他 国にないハンディを負っていたが、このたび通年の打上げが一応可能とな った。打上げ機数が年間17機という制限があるが、これは当面あまり問題 にはならないだろう。もし、これからやってくる次期固体燃料の「イプシ ロンロケット」を、種子島でなく内之浦で打ち上げることにすれば、一層 制約条件の緩和を実現できる。大所高所に立った判断が求められている。 あとは円高という強敵だが、これは宇宙関係者の力ではどうしようもない ことである。

(YM)

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