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9月22日「民間人の宇宙旅行」

 現在宇宙へ人を運べる乗り物は、ロシアのソユーズ、アメリカのスペー スシャトル、中国の長征2Fの3機種です。中国は有人用に新たなロケット を開発中と思われますが、スペースシャトルはあと2機(もしくは3機)を 打てば退役となります。

 2003年に日本で開催された宇宙探検家協会(ASE: Association of Space Explorers:宇宙飛行士協会)の会議が開催されたのをご記憶の方もいら っしゃるでしょう。この協会は、アポロ9号の飛行士ラッセル・シュワイ カート(アメリカ)、人類初の宇宙遊泳をしたアレクセイ・レオーノフ (旧ソ連)らによって1985年に設立されたNPOで、本部事務局は、ヒュー ストンとモスクワに置かれています。その参加資格は「宇宙空間で地球 を1周以上飛行した人物」ということで、現在までに35の異なる国から325 人以上の宇宙飛行士・宇宙飛行関係者が参加しています。

 これまでに国家の宇宙機関が税金を使って宇宙飛行士として養成し認定 した人以外で宇宙へ行った人を思い起こすと、寡聞ながら1990年の秋山豊 寛さんが最初だと思います。ただし秋山さんは旧ソ連の宇宙飛行士として 認定されていますから、日本の税金で養成したわけではないけれども、 立派な宇宙飛行士です。

 現在ロシアのソユーズで民間人を旅行者として宇宙へ運んでいます。彼 らが「ロシアの宇宙飛行士」として認定を受けているかどうかは知らない のですが、彼らも軌道飛行をしていますから、宇宙探検家協会の一員であ ることは確かですね。

 さて今を去ること80年余、1927年のこと。一人の青年がニューヨークの ルーズベルト空港からパリのル・プールジェ空港まで、5810 kmの単独飛 行に成功しました。単発の飛行機による大西洋横断を成し遂げた若者は、 3日もの間不眠不休で飛び続け、飛行機の時代を新たな段階に引き上げま した。その強靭な意志と肉体を持った青年の名は、チャールズ・リンドバ ーグ──もとはと言えば、セントルイスとシカゴ間を飛ぶ24歳の郵便飛行 士でした。こうして前人未踏の快挙を成し遂げた彼は、2万5000ドルの賞 金「オーティーグ賞」を獲得したのです。

 気力を振り絞ってリンドバーグが着陸したル・プールジェ空港で、愛機 「スピリット・オヴ・セントルイス」を見物に来た人の数は、実に20万人。 翻ってニューヨークに凱旋したリンドバーグを、400万人の市民が紙吹雪 で迎えたそうです。6人の冒険飛行家の命を奪いながら、まだ誰も成功し たことのない危険への決死のチャレンジでした。

 20世紀のはじめ以来、航空関係の懸賞つきコンテストが100以上は行わ れたでしょうが、そうした努力が、現在の3000億ドルに達しようかという 航空産業を生み出したのです。その最も華やかで有名なものが「オーティーグ賞」 であったと言えるでしょう。

 そしてそれから80年足らず、2004年には、スペースシップワンの快挙が ありました。考えてみるとスペースシップワンの飛行士たちは、冒頭の宇 宙探検家協会の会員にはなれないんですね。軌道飛行をしていませんから。 あのスペースシップワンによる飛行の方が、お金持ちたちの宇宙飛行より は、はるかに「冒険」という言葉の響きには共振しているような感じはし ますが……。冒険ではあっても探検ではないのかな?

 さて、多額の金さえ払えば宇宙飛行のできる時代が来ました。現在まで にお金持ちたちの宇宙飛行者が7人(延べ8人)出現しました(表、図1〜 3)。この7人の宇宙飛行はすべてソユーズによって打ち上げられたもの だったわけですが、これに殴り込みをかけようとしているのがアメリカで す。スペースX社のもくろみは以前に紹介しましたが、このたび発表され たのはボーイング社のものです。

 (表)http://www.ku-ma.or.jp/ym/ym100922-01.jpg
 (図1)http://www.ku-ma.or.jp/ym/ym100922-02.jpg
 (図2)http://www.ku-ma.or.jp/ym/ym100922-03.jpg
 (図3)http://www.ku-ma.or.jp/ym/ym100922-04.jpg

 オバマ大統領の戦略に沿い、2015年を目標としてアメリカの宇宙飛行士た ちを運ぶ民間発の宇宙船(ボーイング製)は図4のような設計になってい ます。7人の飛行士を搭載できる構造になっており、NASAと1800万ドルの契 約を結んで開発に着手しています。NASAの計画では、この宇宙船で4人の NASA飛行士をISSに運び、民間の宇宙旅行者のシートを3人分確保するつも りのようです。アメリカから飛ぶ初めての軌道飛行の民間人ということに なりますね。

 (図4)http://www.ku-ma.or.jp/ym/ym100922-05.jpg

 ボーイング社のためにその旅行者のマーケティングを受け持っているの は「スペース・アドベンチャー社」です。この会社は、ソユーズの民間人 のフライトもアレンジしていますから、必然的に同じくらいの値段になる のではないでしょうか。ティトーさんが飛んだ頃と比べると大分高くなっ ているのですが、一番最近(昨年)飛んだギ・ラリベルテさんは4000万ド ル払ってISSに8日間滞在しました。

 ただし、このアメリカ製の宇宙船で本当に民間人がISSへ行けるかどう かは、米国議会でNASAの将来についての議論が決着しないと分かりません。 というのは、アメリカ国内には、ブッシュ大統領時代に計画された、政府 主導で「アレースT」や「アレースV」などの大型ロケットを開発して飛 行士を運ぶべきだと主張する勢力が多く存在しており、オバマ大統領の提 案した民間主導の有人飛行計画が最終的に支持されるかどうかは、微妙な 状況にあると思われます。これからのアメリカ国内の議論に注視しましょ う。

 オバマ戦略の狙いは、リンドバーグが喝を入れた航空産業のように、宇 宙への定期航路を民間が開発する努力に政府予算を投資し、例えばISSに 国の宇宙飛行士を派遣する際には、その民間の有人宇宙船のシートを政府 が買い上げようという策なのではないかと思われます。これは実は、アメ リカがロシアに勝つかどうかという問題ではなく、宇宙飛行の値段を格段 に下げて、大規模な民間人の宇宙輸送を実現できるかどうかの分水嶺だと、 私は考えているんです。まあアメリカが駄目なら、将来は日本がやりまし ょうよ。

 それにしても日本の有人飛行の議論がどうなるかは気になるところです。 というよりも、国の政治を預かる立場の人たちが、日本の未来を宇宙との つながりで見ているわけではないことが徐々にはっきりと見えてきたので、 しばらくはちょっと「忍」の一字ですね。しかし他方で日本の輸送船HTV を回収可能なものにしようという計画もあります。日本としては、したた かに技術を一歩一歩積み上げながら(着手小局)、その蓄積をいずれ世界 をリードする日本の宇宙進出戦略に結びつける次世代を広く育成する、長 期的な行き方を選ぶ(着眼大局)のが、最適な選択なのでしょうか。

(YM)

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