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YMコラム
9月9日「月面の活動も生々しく──アポロを軌道上からとらえた」

 すでに以前、アメリカの月周回衛星ルナー・リコネイサンス・オービター(LRO)が、1960年代末から1970年代初めにかけて敢行されたアポロ宇宙船の月面着陸の証拠を、軌道上から撮影して公開しました(既報:図1)。ところがこのたび、同衛星は、さらに鮮明な画像を獲得し、発表しました。


(図1)LROが前回とらえたアポロ17号着陸船

 2009年6月以来、LROは、高度100 kmの高度で月を周回していましたが、以前の画像は、アポロ宇宙船を撮影するために、50 km以下まで降りてきて撮ったものです。それが今回はさらに降下して21 kmという至近距離で写しました。前に撮影した時と比べて、太陽光が24度高い角度にいたなので、クレーターの影が少なく、鮮明な画像となりました。

 アポロ計画で最後の月面着陸となったアポロ17号(1972年)の着陸地点付近を撮った詳細画像(図2)では、飛行士たちが月面に残したハードウェアが映っており、LRV(月面車)を運転して飛行士たちが動き回った(図3)車輪の跡が、平行線となってくっきりととらえられていますね。


(図2)LROがとらえたアポロ17号着陸地点付近


(図4)アポロ17号の月面車

 図2では、月面車の車輪の跡とは明らかに区別できる飛行士たちの足跡も鮮明にとらえられていますね。それだけでなく、着陸船から取り出して飛行士たちが月面に設定した実験機器、いわゆるALSEPの位置(図4)も視認できます。


(図4)ALSEP

 着陸船の周囲を拡大した部分を見た時、科学者たちは、「思ったよりたくさんのものが散らばっているな」と思ったそうです。しかしよく考えてみると、飛行士たちが月面での活動を終えて周回軌道上で待つ帰還船に向けて上昇する時、いろいろと船内のものを捨てて行ったし、着陸船の下半分を発射台にして飛び立った際にいろいろなものが吹き飛ばされて散らばったはずです。それがどんな飛ばされ方をしたのかも、今回のより鮮明な画像でいろいろと分かることになりました。

 また、飛行士たちは星条旗を立てた(図5)わけですが、その星条旗そのものは小さすぎて確認できませんでしたが、周辺のさまざまな跡から、どこに立てられたのかは推定できます。ナイロンでできた変哲もない旗が、高熱にあぶられる月面で果たして正常に残されているのかどうかは疑問ですが……。


(図5)アポロ17号の飛行士が立てた星条旗

 これらの写真の高度とか色の濃さなどから様々な事柄が研究できるし、また実際に持ち帰った岩石が月面のどの辺りから採取されたのかが分かるので、その価値は計り知れません。それにしても、アポロ時代に貧弱なデータを基にして着陸地点を決めた人たちの何と優秀なこと。着陸船の残骸や実験機器、月面車などの画像も研究に値します。

 たとえば、月面のダストが人間の力を借りないで自然にどれぐらい移動のかについてはいろいろと議論があります。前述の物体の明るさを調べることで、その移動の程度が推定できるでしょう。もし大量のダストの移動があるようなら、かつて明るく輝いていたものをダストが覆うので、輝きが褪せてくるでしょうから。

 今回の写真を見た限りでは、ダストの移動がそれほど顕著であるとは思えません。また、着陸船や月面に残したレーザー反射板(図6)などの位置は非常に正確に測定されているので、それらは軌道上にいる周回衛星にとっての基準点の役割を果たします。


(図6)レーザー反射板

 先述したとおり、この時は、LROは高度21 kmにまで降下したのですが、重力の噴き等分布のため月の周回軌道は不安定なので、その軌道には1ヵ月くらいしか留まれなかったようです。アポロ12号、14号、17号の3機に関する撮影しかできなかったようです。

 アポロ14号の撮影(図7)でも、アラン・シェパードとエドガー・ミッチェルの2人が、フラ・マウロと呼ばれる 周囲の高地を探索した様子もよく分かります。とくに重要な目的地となったのは、コーン・クレーターです。月の地下に眠る物質が露出していて、貴重なサンプルが採集できると考えられたからです。


(図7)アポロ14号着陸地点の詳細画像

 世の中では、宇宙飛行士たちの歩みを、まるで公園の散歩みたいに考える人も いますが、実際はかなりのハードワークで、14号の際には、史上初めて 宇宙飛行士が着陸船から見えない場所まで移動したのです。しかも、身動きのとりにくい宇宙服を着たままで、丘の高さは1400 m。精密な地図もなく、装置や採取したサンプルを乗せたカートを引いて進まなければならなかったわけです。

 2人は目指すクレーターまでどれくらい近づいたのかもわからないまま進み続け、酸素の残量が少なくなったところで、あえなく引き返すこととなったのでした。現在まで、2人の宇宙飛行士がどの辺りまで進んだのかは、 だれにも分かっていなかったのですが、LROがとらえた画像には、2人が歩んだ軌跡が見られ、 クレーターの約30mほど手前で引き返したことが明らかとなりました。

 図7の中で、一番左にあるのがALSEPで、その右が着陸船「アンタレス」の下降段です。さらに右上に位置するコーン・クレーターへ宇宙飛行士が懸命に進んだ跡が、細い筋となって見えています。

 いずれにしろ、過去の栄光をこうやって40年前後経った後に確認できるなんて、何だかとてつもなく懐かしいですね。

(YM)

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