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7月5日「ヒッグス粒子の発見」

 2012年7月5日の朝刊の一面には「ヒッグス粒子発見」のニュースが一斉に躍りました。これだけ「あるぞ、あるぞ」と言い続けられて、ついに「やはりあったか」という感じですが、それにしても現代物理学の標準理論の現段階での正しさが、はっきりと浮かび上がった大発見でしたね。ニュートリノ事件の直後だけに、とても明るい気持ちになりました。この計画に携わってきたすべてのみなさんに、心からおめでとうと申し上げます。

 7月4日、欧州合同原子核研究機関(CERN)の講堂には、通路に座る人がいるほどの人が集まり、21世紀最初の画期的発表が行われました。つづいて国際会議では稀なスタンディング・オベイション(図1)。会場には、ヒッグス粒子の提唱者、ピーター・ヒッグス博士(イギリス)の顔も(図2)。日本の南部陽一郎博士(図3)が示唆し、ヒッグス博士が提唱した「神の粒子」──標準理論が予言する17個の素粒子のうちでこれまで見つかっていなかった最後の素粒子を、遂に人類はとらえたのです。


(図1)CERN講堂での喝采


(図2)喜びのヒッグス博士(右)


(図3)また勲章が加わった南部陽一郎博士

 遥かにモン・ブランを望むスイスのCERNには、LHC(Large Hadron Collider:大型ハドロン衝突型加速器)は、全周約27 kmの円形の加速器です。山手線より少し小さいくらいの大きさ。それにしてもでかいですね。ここで陽子(水素の原子核ですね)同士を光速に近いスピードで衝突させると、さまざまな素粒子が生まれます。その中に、陽子の130倍の質量を持つ新しい素粒子があることをつきとめようという問題意識に貫かれた実験が、実に1100兆回もやられたそうです。

 そこで生まれたこの新しい素粒子は非常に不安定で、すぐに別の粒子になってしまいます。だからこの他の素粒子になって行く様子を理論的に予測し、その特徴とどれぐらい符合するかを検証していくわけですね。LHCでは、欧米中心のCMSチームと日本の16の大学・研究機関も参加しているATLASチームが独立の検出器を設置し(図4)、新しい素粒子である確率を、それぞれ99.99993%と99.99998%にまで高めたと発表されました。一般には物理学の常識として、「発見」と認められる確率は99.9999%と言われていますから、今回の劇的発表に踏み切ったわけです。ただし、両チームはさらに追加実験をやって、これまでの3倍のデータを集めるそうですから、やがて確固不動の結論につながることでしょう。


(図4)CERNのLHC

 参考のために付け加えれば、ATLASの検出器(図5)の心臓部には、浜松ホトニクスの技術が貢献していること、また加速器の要である超電導磁石には古河電工の技術が貢献しています。


(図5)ATLASの検出装置

 これから続々とヒッグス粒子の解説が新聞・雑誌を賑わすことでしょう。関連する概念図を簡単に書いてみました(図6)。ビッグバンの100億分の1秒後に発生したヒッグス粒子のために、それまで光速で飛び交っていた素粒子たちは減速され、集まらざるを得なくなって質量が生まれました。そして原子核→原子・分子→星・銀河→……とつながって私たちの生命までのストーリーが紡がれてきたのです。形あるものが姿を表すルーツとなったヒッグス粒子を、私たちの喜怒哀楽は大いに多としなければならないのでしょう。


(図6)ヒッグス粒子の起こしたこと

 でもその姿の分かっているものが、この宇宙にはわずか4%だという事実も一方ではあります。この宇宙を構成する圧倒的な存在である謎のダークマターやダークエネルギーなどの解明に向けて、物理学が今後どのような新展開を見せて行くのか、今回の発見がその人類の知の道程のどういう幕を開けたのか。興味津々の未来が再びスタートラインについたのでしょう。

(YM)

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