2009年12月24日
自然観察のきっかけや動機エピソード

1 はじめに

  小牧中学校の校長&10月からは小牧市「宇宙の学校」の校長を兼任することになりました清水と申します。 先日、KU-MA事務局より会員コラムへの原稿依頼を受けました。新たに書くのは大変なので、1か月ほど前に友人から頼まれた座学「自然観察について」の原稿から抜粋し、私と自然観察のきっかけや動機エピソードについてまとめてみました。

2 きっかけや動機を大切に

 ・ 昆虫採集&飼育&標本作り…小学生から興味、高校時代の友人の影響
                       チョウからオサムシやナナフシなどへ

 私は小牧市内の東町に住んでいましたので、小学生のころは自宅から近い小牧山へちょくちょくクワガタ採りに近所のグループで出かけていました。どういうわけか、小牧山でカブトムシを採集したことはほとんどありませんでした。

 小中学校時代は理科が好きだったので科学クラブに所属し、先生の指導のもとヤシ油を材料に洗濯石けんを作ったり、ヒイラギの葉脈標本を作ったりしました。

 高校へ入学後すぐに、教室や通学で何かしら気の合う友達が数人できました。その中の一人N君は父親の仕事の関係で、小学校時代は東京に住んでおり国立科学博物館の講座や採集会に参加していました。そのため、最初に彼の家を訪れたとき、部屋にある20箱以上の標本箱に驚きました。

休日を利用し二人で定光寺や藤原岳にチョウの採集に出かけ、標本の作り方を教えてもらいました。そのうち、よい標本を作りたいということから卵や幼虫を採取して飼育することにも取り組みました。

 定光寺ではギフチョウの幼虫、長野県の松本周辺ではオオムラサキの越冬幼虫、新潟県南小谷ではヒメギフチョウの卵などの採集が思い出に残っています。オオムラサキの幼虫は昼食用として購入した駅弁の釜飯の素焼き容器に入れ、食草のエノキの葉が出てくる春まで冷蔵庫の中で休眠させました。春になってからは幼虫にエノキの葉を採ってきて食べさせ、終令幼虫になるとエノキの枝に直接袋がけをして育てました。サナギになってからは、枝をつけたまま自宅の部屋において育てチョウにしました。ヒメギフチョウは食草のウスバサイシンが身近にないため、食草も採ってきて栽培しました。採ってきた食草は冷蔵庫で保存しました。ギフチョウの仲間はサナギになってから半年以上、素焼きの植木鉢にミズゴケと炭とを入れたものの中におき植木鉢ごと地面に埋めておきました。翌春、チョウが出てきそうなころに室内に入れ、羽化を待ちました。

 大学生になると友人Nくんとの二人の関心はオサムシに向かいました。オサムシはカブトムシのように堅い翅の下の飛ぶための翅が退化し、飛んで移動することができない昆虫のため地方変異が多い昆虫となっています。同じ種のものでも、金属の銅光沢のもの、緑色がかったものなどバラエティに富んでいます。採集方法も変わっており、地面を歩いているものを採るだけでなく、夏は紙コップに黒砂糖・ビール・みりんなどを混ぜた液を入れたものを地面に埋め込み、翌日に紙コップをチェックしてオサムシを採集します。また、冬は崖の土の中で越冬している成虫を土から掘り出します。崖を少し崩してしまうので、迷惑をかけないような場所で採集しました。なお、余談になりますが漫画家の手塚治虫さんはオサムシが好きだったので、ペンネームを治虫(オサムシ)と書いて治虫(オサム)としています。

 小牧市周辺で最も普通に見ることができるナナフシは「ナナフシモドキ」と言います。市内の小牧山や兒(ちご)神社で観察するのは、メスばかりで今までオスは観察していません。しかし、これまでに少数のオスが観察されています。メスばかりなのに、なぜ毎年観察できるかというと、ナナフシの仲間は昆虫の中でも下等な種類のため単為生殖という方法で子孫を残しています。交尾をしないメスが産んだ卵が、翌春ふ化して成長します。他のナナフシでも、オスがまれにしかいない種類があります。

 ナナフシとの出会いの中で、特に忘れられないことがあります。大学生時代に友人と泊りで出かけた岐阜県の根の上高原で、トビナナフシを数多く観察・採集しました。それを持ち帰り図鑑で調べていくうちに、図鑑に載っている「トビナナフシ」「ヤスマツトビナナフシ」の特徴と少し違っているように感じました。その後、御在所岳や愛知県内で採集を続けていくうちに、トビナナフシは「トビナナフシ」「ヤスマツトビナナフシ」の2種類ではなく、「新種」含めた3種類いるのではないかと考えるようになりました。さらに、3種ともほとんどメスしかいませんが、トビナナフシだけはオスを採集することができました。私と友人は学者ではないので新種として発表することができないので、3種と思われるトビナナフシの体の特徴や卵の形体について整理し、あわせて食草との関連についても資料で調べまとめました。

 私より昆虫関係者についてネットワークが広い友人は、バッタやナナフシについて造詣の深い名古屋昆虫同好会のOさんに相談し、私たちの考えに間違いはないとの結論にいたりました。Oさんは1999年にこれまでの研究をまとめ「ナナフシのすべて」という本を出版されました。その本には「新種」と考えていたものが「シラキトビナナフシ」という名前で載りました。

 愛知県周辺で観察できるナナフシは、最初に紹介しました「ナナフシモドキ」の他に「エダナナフシ」と「トゲナナフシ」が観察・採集されています。しかし、これまでに小牧でも観察・採集されている「トゲナナフシ」とまだ出会えずにいます。どこかで見つけられたら教えていただきたいと思います。

 大学時代以後の数年はナナフシを中心に観察していました。ナナフシの仲間は南方系の昆虫のため、沖縄や石垣島などにはまだ数種類います。そこで、チョウの採集を兼ねて数回石垣島に出かけました。

 ・ 野鳥の撮影…始めは身近な鳥の名前を覚えるため、30代前半から
            生きている様を写真で撮りたい→いい道具がほしい

 岩崎中学校に勤めていた30歳前半の頃から、身近な野鳥の名前を覚えたいという気持ちが出てきました。早速、野鳥の図鑑を購入し覚えようとしましたが、なかなか覚えることができませんでした。そこで、趣味の写真を利用し鳥の名前を覚えることにしました。最初は地面にいる姿や枝にとまっている姿を撮り、鳥の種類を同定し覚えるようにしました。もともと写真が好きなため、せっかく撮るならば市民美術展に出品できるような写真を撮りたいと思うようになりました。最初に出品した作品は、上高地で撮った木の枝で鳴くウグイスでした。100㎜~300㎜のズームレンズでピントは手で合わせ撮ったウグイスの写真はピントのあまい写真でした。その後、望遠鏡にカメラを取り付けて撮りましたが、写りはよくありませんでした。最終的にはお金はかかりますが、単体の望遠レンズが必要がベストだと思いました。そこで、いろいろ検討した上で600㎜の望遠レンズを購入しました。

 このレンズで撮ったスズメの写真は市民美術展で特別賞の市議会議長賞をいただくことができました。このレンズの欠点は大きくて重いことで、カメラボディと三脚をあわせると重量が10㎏にもなることです。

 ・ 自然観察指導員…学校に環境教育が導入、ボランティアとして活動したい気持ち
               40代前半に講習会を受講(伊良湖を会場で開催)
               講座のノウハウを市内の理科教員に紹介

 桃ヶ丘小学校に勤めている40歳前半の頃、学校教育に環境教育がとりいれられるようになりました。ちょうどその時、新聞に載った愛知県の広報記事で自然観察指導員講習会参加者募集が目にとまりました。会場は伊良湖と自宅からは遠いですが、実施時期が学校の休日と重なったため参加することにしました。募集人員は資料にもあるように、県内で50名となっていました。そこで、何とか定員にもぐり込ませるため、教員ということをアピールしようと学校の封筒を使って応募しました。その結果、運よく参加できることになりました。

 指導員養成の目的として、自然観察を正しく進めていくために必要な自然保護の基本的な考え方や自然観察の方法について研修し、自然保護の精神をバックボーンとしてもった自然の中への案内人、ボランティア指導者の養成を図ろうとするものとなっています。

 会場の伊良湖国民休暇村へは、電車とバスを乗り継いで出かけました。宿泊はロッジではなくバンガローでした。ただし、講義はロッジの会議室で行われました。あとの活動は周辺のフィールドで実施されました。

 自然観察指導員の資格を取得してから、しばらくは休日に観察会のお手伝いに出かけました。しかし、仕事の関係や趣味の写真撮影などで、時間の調整が難しくなり足が遠のいていきました。

3 最後に

 ・ 自分が味わった「わくわく・ドキドキ」を子どもたちに伝える
 ・ ネットワークを大切に…10月から小牧市「宇宙の学校」をスタート

 私は子どもたちに、私が今まで味わった自然に対する「わくわく」「どきどき」を伝えたいと思い自然観察会や理科工作講座を行っています。子どもは、ちょっとしたきっかけでも興味・関心を持つと、自分からさらに発展させていくようになります。私の観察会や講座は、そのきっかけ作りに役立てばと考えています。

 私が小牧市「宇宙の学校」と結びつくきっかけを作ってくださった佐橋さん、佐橋さんの橋渡しにより的川先生や遠藤先生との結びつきもできました。さらに、東海地区のKU-MA会員のみなさんや大垣市教育委員会のWさんとの出会いもできました。私のネットワークをさらに広げることができました。

   今回のチャンスを与えていただいた佐橋さんと小牧市教育委員会とに感謝を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
小牧市「宇宙の学校」 清 水  豊
小牧「宇宙の学校」レポート

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